「歯の食いしばり」「歯ぎしり」「顎(あご)の痛み」を緩和したいです
「ネットブログ健康相談会-10」
(ご相談)
寝ている時の「歯の食いしばり」「歯ぎしり」があります。外出を控える自粛生活が長引き、さらに悪化しています。朝起きた時にひどく疲れを感じます。起きている間も、つねに歯を食いしばっていて力が抜けません。そのため「顎の疲れ」「首、肩の疲労感」があります。
30歳代・女性
ほほ、顎、耳のまわり、こめかみに痛みを感じています。
顎関節症(がくかんせつしょう)を改善するツボはありますでしょうか。
50歳代・女性
(アドバイス)
■「歯の食いしばり」「歯ぎしり」について
患者さまの中には、カラダの力が抜けない方がいらっしゃいます。
・腰掛けているときに、かかとを上げてつま先立ちをしている
・いつも手を握りしめている
・いつも上の歯と下の歯をくっつけている
ご本人としてはまったく無意識であり、いつの頃からかわからない長年の癖となっています。
「気を抜く」ことができない=「力を抜く」ことができない、ご本人の性格によるところが大きいようです。
私たちは生活の中で、活動的になったり、リラックスしたりしながら、カラダとココロが疲れすぎないようバランスを整える働きがそなわっています。
その働きの一つが、よく耳にする「自律神経(じりつしんけい)」です。
・「交感神経(こうかんしんけい)」 ⇒ 活動的な時に活発になる
・「副交感神経(ふくこうかんしんけい」⇒ リラックスする時に活発になる
人工的な照明にあたっていると交感神経が活発になることがわかっていますが、私達が日常的に使っているパソコン、スマートフォンなど、「白光する画面を見る」とさらに交感神経が活発に働くようです。
私たちは緊急事態宣言を経験し、息が詰まる生活を続けています。
新型コロナウイルス感染リスクによる不安がつきまとい、すべての活動で自粛生活が続いている状況においては、寝ても覚めても交感神経が活発で、心が休まることもできません。
まさにこのような状況が、寝ている時の「歯の食いしばり」「歯ぎしり」の悪化を招いたのでしょう。
■顎関節症とは?
次の3つの症状のうち、1つ以上当てはまる場合は顎関節症の疑いがあるとされています。
①口を開ける動作にともない顎の関節や筋肉が痛む
②口が開かない(開いても指2本分程度)
③口を開けたり、閉じたりするとき音がする
顎関節を直接動かしているのは
咬筋(こうきん)
側頭筋(そくとうきん)
です。
顎関節症の患者さんの咬筋、側頭筋を触診しますと、左右で筋肉の緊張、凝りに差があります。
左の咬筋、側頭筋に緊張、凝りがあれば左くび、左肩に凝りがあります。
とくに胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)、斜角筋といったくびの筋肉が凝っています。
顎関節は左右対象の構造ですが、顎関節を動かす筋肉の動きが左右対象ではない場合には、顎(あご)の動きに歪みが起きます。
左右どちらか一方の顎が動きやすくなる反面、もう一方の顎は反対に動かしにくくなります。
左右の顎関節に歪んだ状態が続くと、関節の構造そのものが変形して痛みを発症することも出てくるのです。
顎の動かし方に左右差がある場合、全身を見ると、姿勢も、動作も、同様に左右差が大きく見られることが特徴です。
■歯の治療、歯ぐきの状態も影響します
患者さんの口の中の状態はお聴きします。
歯、歯ぐきの状態が全身の状態に反映されていることがよく見られるからです。
たとえば、くびや肩が、かたく、こっていても、自覚がない方と、自覚がない方がいらっしゃいます。
感じていらっしゃる方の共通点が、歯科治療の経験をなさっているということです。
とくに抜歯してらっしゃる場合、カラダの不調によって歯ぐきの血行が悪くなったり、熱を持ったり、赤くはれたりします。このような状態になると、いつも以上にくびがこる、場合によってはくびがまわらなくなる「寝違い」が起きます。
「寝違い」は歯ぐきの血行を改善することで楽になります。
「頭痛」「副鼻腔炎」「白内障」など、くびから上にあらわれる病気の多くが口の中、歯や歯ぐきの状態が原因の1つとなって起きていることがよくあります。
■足の指、手の指、ケガの経験ありませんか?
現代医学では、骨折やねん挫、打撲などのケガをした場合、患部治療が一般的です。患部が治癒すれば治療終了となりますが、東洋医学では患部が全身に及ぼす影響までを見て治療を行うことがあります。
たとえば、手の突き指をした場合、時間の経過とともに痛みは軽減していきますが、手の指の動かし方にぎこちなさが残るこどがあります。
1本の指のぎこちなさが、カラダ全体の動作、姿勢の歪みの原因となっているケースが多く見られます。
例えば、足の指の骨折が、顎関節症のそもそもの原因だったというケースです。
指だけでなく、手や足にケガの経験があれば、そのケガが原因でカラダの歪み、左右のアンバランスがあらわれます。
ご自身のケガの履歴を振り返ってツボを探し、お灸をすえてみることも、症状の緩和に効果的な場合がよくみられます。
■交感神経のバランス、カラダの左右バランスをととのえるお灸を・・・ツボのご紹介
「 天窓(てんそう)」
①喉のでっぱりを探します。
②喉のでっぱりと同じ高さで、胸鎖乳突筋をはさんだ後ろ側の縁(ふち)にあります。
胸鎖乳突筋の探し方・・・
首を回して右方向を見ると、左耳の後ろから斜め前、下方(鎖骨:さこつ、胸骨:きょうこつ)へ向かう筋肉が浮き上がります。これが左の胸鎖乳突筋です。
右の胸鎖乳突筋を探すには、首を回して左方向を見て、右の胸鎖乳突筋を浮き上がらせます。
食いしばりによる首のこり、顎の不具合、手や腕のしびれ、痛みなどにお灸をします。
首すじは「火を使わないお灸(せんねん灸太陽)」がおすすめです。
「手三里(てさんり)」
ヒジを曲げた時にできるシワに人さし指をおき、指幅3本。くすり指があたっているところが手三里です。
胃腸の働きをととのえます。消化不良だけではなく、だるい、やる気が起きない、悩みやすいなど精神的な症状にもおすすめです。
「足三里(あしさんり)」
ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指幅4本そろえて小指があたっているところが足三里です。
顔のむくみ、痛みを緩和するツボです。
「太衝(たいしょう)」
足のこうで、第1指(親指)と第2指の骨が交わるところにある、くぼみの中です。
全身の筋肉の緊張、精神的な緊張を緩和するツボです。
「陽陵泉(ようりょうせん)」
ひざの外側下にある骨のでっぱりのすぐ下のへこみが陽陵泉です。
カラダ全体の左右バランスをととのえ、筋肉の緊張をほぐします。。
足の甲のツボをさがしてみましょう
足の甲の骨と骨の間を押してみて痛みを感じるところにお灸をすえて、顎の緊張、首こり、肩こりがほぐれるところを探してみましょう。記憶に残る足指のケガだけでなく、起きたことすら気づかないままカラダのアンバランスに影響を与えているケガが潜んでいるかもしれません。
●親指と人差指の間・・・「行間」「大衝」
●人差指と中指の間・・・「内庭」「陥谷」
●薬指と小指の間・・・「侠渓」「地五会」「足臨泣」「丘墟」