せんねん灸の授業 at 鹿児島鍼灸専門学校
春らしい陽ざしを感じるこの頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
例年になく早い桜最前線。暖かな春の到来です。
昨年来、新型コロナウイルスに世界中が翻弄され、日常生活のあり方が大きく変わりました。
この変化は「自分のからだは自分で守る」意識を高め、多くの皆さまがお灸へ関心を持ち、実際にお灸をはじめる方が増えています。
そんな皆さまに、せんねん灸の使い方、ツボの探し方などを伝え、お灸でセルフケアをはじめる支援をしてくださっているのが「せんねん灸セルフケアサポーター」です。
今回は、鍼灸師を養成する専門学校教員でいらっしゃる伊藤孝訓(いとうゆきのり)先生に、「せんねん灸セルフケアサポーター」としてのご活動についてお話を伺いましたのでご紹介いたします。
伊藤先生は、鹿児島鍼灸専門学校(鹿児島県鹿児島市)鍼灸あん摩マッサージ指圧学科の教務主任でいらっしゃいます。
鹿児島鍼灸専門学校は、1910年(明治43年)に創立された日本最古の鍼灸専門学校です。今年度で創立111年目を迎える伝統ある学校です。はり師、きゅう師、あんまマッサージ指圧師の資格を取得することができます。
■ 3年生を対象に「せんねん灸の授業」をされたそうですね。そもそものきっかけを教えてください。
(伊藤先生)
「せんねん灸セルフケアサポーター」として活動をはじめるために講習会に参加した際、「もぐさ」づくりを体験する機会をいただきました。お灸の原点に触れることができましたし、楽しかった。
この「もぐさ」づくりを学生の皆さんにもぜひ体験してもらいたいと思ったのです。
お灸の導入として「もぐさ」づくりを体験することも良いのですが、本校では3年生の仕上げの時期、卒業判定試験や国家試験勉強の追い込み時期に実施しています。
精神的にも身体的にも緊張した状態が続きますので、「もぐさ」づくりを体験したり、いろいろなタイプのせんねん灸を体験したりして、リラックスしてもらいたいという思いからはじめました。
■ 伊藤先生の「思いやり」の気持ちがジンと伝わってきます。学生の皆さんのご様子はいかがでしたか?
(伊藤先生)
すり鉢を使って乾燥させた「よもぎ」をすりつぶしたり、ざるを使いふるいにかけたりしながら、「もぐさ」ができていく過程を楽しんでいました。
自分たちでつくった「もぐさ」を使い「隔物灸(かくぶつきゅう)」をすると「気持ちいい」「こころが和らぐ」「お茶をのみながらやりたいね」などの声があがり、「もぐさ」づくりを十分堪能していました。
次に煙が少ない「せんねん灸の奇跡」を体験しました。
お灸の歴史、お灸の原点そのものである「もぐさ」のお灸と、「もぐさ」を炭化して煙を抑えた「せんねん灸の奇跡」を比較体験しました。
「煙がほぼ出ないなんてすごい!」「現在の住宅事情にあわせてお灸も変わるんですね」と、こちらも大好評でした。
■写真から楽しさが伝わってきます。学生の皆さんはご卒業後どのような進路を選ばれるのでしょうか?
(伊藤先生)
本校の学生の9割は九州出身者です。そのうち鹿児島県出身者は6割を超えます。全員に共通して言えるのはとても地元愛が強い。将来、地元地域の健康増進に貢献したいと考えている学生が多いのが特徴です。
卒業してすぐに、地元で仕事に就く学生も多いですが、最近は、さらなる技術や知識、経験を会得するために関東や関西などを選ぶ学生も多くなっています。そんな先輩たちを見て、在校生も大いに刺激を受けているようです。彼らがいつか地元に戻り、地域のために活躍する日が楽しみです。
■皆さんの鹿児島愛、九州愛はとても強いのですね。在学中における地域活動について教えてください。
(伊藤先生)
本校では毎年7月に、地域の皆さまへ「はり・きゅう・マッサージの魅力を伝える」をテーマに「鹿鍼祭(かしんさい)」を開催しています。
「鹿鍼祭」では、学生の皆さんがお灸教室や東洋医学講座などを企画立案します。地域への広報活動、イベント開催までの準備、当日の運営実施。終了後はイベントを振返り、次回へどのように活かしていくかの総括まで、一連の業務をすべて学生たちが行います。
みんなで知恵を出し合い、力を合わせると、一人ひとりでは気づくことができない、想像以上の力を発揮ですることができます。卒業後、鍼灸師となって「鍼灸の魅力」を伝えていく時、この「鹿鍼祭」での経験が大いに生きてきます。
鍼灸の魅力を伝えていくには、地域の方が大勢ご来場くださる「鹿鍼祭」は最良の場です。「鹿鍼祭」のお灸教室ではセルフケアのためのお灸を体験していただいています。
こちらは一昨年、2019年開催「鹿鍼祭」の様子です。
ご来場者にはご自分でせんねん灸をすえていただきます。
司会進行は学生が行い、1人のご来場者に1人の学生がサポートさせていただきます。
はじめてお灸をしていただく方でもわかりやすく、楽しんでいただけるよういろいろ工夫しています。せんねん灸の特大模型も学生が手づくりしました(笑)。
■伊藤先生から、鍼灸師を目指す学生の皆さんへメッセージをお願いします。
(伊藤先生)
卒業後、一人ひとりが鍼灸師として、地域の皆さんなどたくさんの方へ鍼灸の良さを伝えていってほしいという思いで授業をしています。
今では「せんねん灸の奇跡」や「火を使わないお灸太陽」など使いやすいお灸もありますので、おすすめしやすいですね。
その良さを伝え、多くの皆さんに毎日の養生としてお灸を使っていただけるよう頑張ってほしい。私も教員として、せんねん灸セルフケアサポーターとして頑張ります!
■「森の管理人」より
鹿児島は日本有数の「お灸どころ」。
鹿児島からお灸の風を吹き起こし、全国へ送り続けてください。
伊藤孝訓先生、お忙しいところインタビューにお答えいただきありがとうございました。