手の親指が痛くて夜も眠れません(ドケルバン病、母指CM関節症)
「お灸の治療とセルフケア- 3」
(ご相談)
2年前から右手の親指つけ根に痛みがあります。痛みが軽くなっては、再び強くなるという状態を繰り返しています。家事で料理をするとき「包丁を持つ」「ふきんをしぼる」動作がつらく困っています。
50歳代・女性
(経過)
・2年前に右手の親指つけ根に痛みを感じるようになった。
・整形外科にて腱鞘炎と診断され、以来、湿布と痛み止めを服用している。
・痛みが軽くなる、強くなるを繰り返している。
(既往歴)
・鼻の不調がありよく鼻がつまる。花粉症でもある。
・4年前にゴルフを始め、右肘を痛めた。
(その他)
・就寝中、トイレのために目が覚める。
・足がむくんでいて、いつもだるさを感じている。
(所見)
右手の親指を見てみると、第1中手指節関節(だいいちちゅうしゅしせつかんせつ)のズレが見て取れます。最近起きたものではないようです。
物を「つまむ」「つかむ」という動作では、指の関節を利用することによりテコの原理がはたらき、大きな力を使わなくても無駄なく物へ力が伝わるようになっています。
当患者さまは、親指の指先寄り関節をあまり曲げずに「つまむ」「つかむ」癖がついているため、必要以上に第1中手指節関節に力がかかり、少しずつ変形してズレたものと思われます。
痛みが起きる直接の原因となったであろう「ゴルフスイング」では、
①「バックスイング」→「ダウンスイング」→「フォロースルー」というカラダ全体の一連の大きな動作
②「まっすぐ飛ばしたい」「遠くへ飛ばしたい」という精神的なプレッシャー
①+②によって、ゴルフクラブを持つグリップ、とくに第1中手指節関節へ大きなストレスがかかり、痛みを発症したものと思われます。
(親指の痛みについて)
親指に起こる痛みには大きく2つにのタイプに分けられます。
(1)ドケルバン病
親指を小指側にたおして手を握る動作をすると親指のつけ根が痛む場合、「ドケルバン病」が考えられます。
炎症は「よく動かす」、つまり繰り返し動作による摩擦熱によって起こりますが、関節に起こると「関節炎」、腱鞘に起こると「腱鞘炎」と言われます。
「ドケルバン病」は、手くびの親指側で、親指を伸ばしたり、曲げたりする2本の腱を包む腱鞘に起こる炎症です。
最近では、スマートフォンを片手で持ち、親指だけを動かす操作を繰り返すことにより痛みが起こるケースが増えています。
また、手首をひねる動作の繰り返しが習慣化された家事や仕事、スポーツなどが原因で起こります。
痛みがやわらいだり、強くなったりをくり返す
利き手の親指に痛みが起こりやすく、痛みがあっても手を使わざるをえないため、痛みがやわらぐ、強くなるを繰り返しています。
痛みをこらえながらも指を使うため、痛みを避けようとして、親指の動作に癖がついてしまいます。
この癖によって、関節に負担がかかり関節炎(母指CM関節症)を併発している事例もあります。
(2)母指CM関節症
指の関節に腫れや痛み、変形が起こる病気を「変形性指関節症」と言います。
母指のつけ根にあるCM関節の軟骨がすり減っていくと、軟骨がかたくなってトゲのようなものができたり、骨同士がぶつかることで痛みや骨の変形が生じて腫れや痛みが起こります。
「握る」「つまむ」動作で、親指のつけ根で痛みが起こります。例えば次のような動作です。
・瓶やペットボトルのふたを開ける
・ドアのノブを回す
・ボタンをかける
・タオルを絞る
・字を書く
・なべを持つ
40代以降の女性に起こりやすい傾向があります。原因は女性ホルモン(エストロゲン)が減少するため、関節がかたくなり、動く範囲(可動域)が狭くなるからです。
その他、次のような原因があります。
・家事、手仕事による指関節への負担
・テニス、バドミントン、ゴルフ、バレーボールなど頻繁に手を使うスポーツ経験
・ピアノ、三味線、琴などの楽器演奏
・突き指、骨折などのケガ
・遺伝的な体質として関節がゆるい→関節がずれやすい→関節が変形しやすい
(関節の痛みの強弱は「むくみ」が原因)
「腱鞘炎」は、腱が通っている腱鞘というトンネルの中で起きる炎症です。
カラダに「むくみ」が起きると、腱がふくれて太くなり、反対に腱鞘内が狭くなります。
狭くなった腱鞘に、太くなった腱が通るわけですから、さらに摩擦が起こり熱を持つようになります。つまり「むくむ」と痛みが増すというわけです。
時期によって痛みが強くなったり、弱くなったりするのは、気候、季節によってカラダの「むくみ」が変わることが原因です。
気候、季節の変化の他に、
・塩分をとった後
・飲酒後
・女性ホルモンのバランスのみだれ:とくに産前産後の女性、更年期以降の女性
・血糖値が高い:血糖値が高いと動脈硬化が起きたり、静脈のうっ滞が起きたりしてむくみやすくなります
・甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのホルモンバランスのみだれ
・腎臓、心臓、肝臓など内臓の病気
などがあげられます。
水を吸収する腸の働き、水を排出する泌尿器のはたらきを高めることで「むくみ」が改善し、結果として「腱が細くなり、腱鞘が広がる」ため、痛みが軽減します。
とうかんじゃさまは、「就寝中、トイレのために目が覚める」「足がむくんでいて、いつもだるさを感じている」ことから、「冷え」と「むくみ」を持っていらっしゃることがわかります。
(セルフケア指導)
(1)痛みが起きている患部の腱や筋肉の緊張をほぐします
ツボ①「魚祭(ぎょさい)」
親指のつけ根のふくらみ「母指球(ぼしきゅう)」の血流を改善して痛みを緩和します。
(動画を見て探す)
ツボ②「第1中手指節関節(だいいちちゅうしゅしせつかんせつ)」
親指と母指球とのあいだの関節にあります。
ツボ③「陽渓(ようけい)」
手の甲側の手首にできる曲がりじわ上で、親指の2本の腱(短母指伸筋腱、長母指屈筋腱)のあいだのくぼみです。
ツボ④「陽池(ようち)」
手の甲側の手首にできる曲がりじわ上で、「薬指の腱」と「小指の腱」の真ん中にあります。
(2)カラダ全体の「むくみ」を軽減します
ツボ「水分(すいぶん)」
おへそから親指の幅1本、真上へあがったところです。
「せんねん灸オフソフトきゅう竹生島(温熱レベル2)/せんねん灸の奇跡ソフト」〜「せんねん灸オフレギュラーきゅう伊吹(温熱レベル3)/せんねん灸の奇跡レギュラー」をすえると「気持ちよい温かさを感じる」もしくは「熱くならない」ポイントを探してください。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
長年お困りの症状でも、鍼灸治療の適応症状である場合がございます。
「せんねん灸セルフケアの森」で「せんねん灸セルフケアサポーター」を検索してください。
お灸のことなら、あなたの良き健康パートナー「せんねん灸セルフケアサポーター」へご相談ください。